抄録
ムツトゲイセキグモは日本にいる稀産の2種のナゲナワグモ類のうちのひとつである. 本報告は, 野外におけるムツトゲイセキグモの生活史, 若令幼体がもちいる餌捕獲法, および本種のメス成体や亜成体がもちいる「投げ縄」網の作成行動についてのはじあての観察記録である. ムツトゲイセキグモは年一世代の多回 (3-6回) 産卵のクモであり, ふ化した幼体は卵のう内でそのまま越冬した. 若令幼体とオスは投げ縄を使わず, 葉の縁で狩りをしていると考えられた. 亜成体と成体のメスは蛾を捕獲するために投げ縄を使用した. 投げ縄作成行動は, 投げ縄を第1脚のかわりに第2脚でもつ以外はナゲナワグモ属のものとまったく同一だった. ときどき, 2個の粘球がついた投げ縄を作ることがあった.