AUDIOLOGY JAPAN
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第54回日本聴覚医学会主題演題特集号
「両耳補聴」 「特発性両側性感音難聴」
特発性両側性感音難聴の検討
—孤発例と家族例の違い—
伊藤 卓野口 佳裕大野 十央喜多村 健
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2010 年 53 巻 2 号 p. 150-157

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抄録
遺伝性難聴を除外した特発性両側性感音難聴 (特難) の特徴を明らかにするため, 孤発例と家族例に分類し, 臨床所見の差異を検討した。対象は, 聴力検査にて難聴の進行を確認できた確実例群31例と, 自覚的進行のみの疑い例群159例とした。両群ともに, 性差, 発症年齢, オージオグラムの対称性, 初診時聴力レベルは, 孤発例と家族例の間で有意差を認めなかった。しかし, 従来特難の特徴とされてきた高音漸傾・急墜型, 水平型の聴力像を示す割合や両耳の難聴が同様に進行する様式を示す割合は, 家族例で有意に高かった。GJB2変異, ミトコンドリアDNA 1555A>G変異, 3243A>G変異についての遺伝学的検査では, 家族例にのみ2つのミトコンドリア遺伝子変異が同定された。従来報告されてきた特難の特徴は遺伝性難聴が示唆される家族例の病態を反映している可能性があり, 遺伝性でない特難の臨床像の解明には孤発例の特難に絞った病態解析が重要である。
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© 2010 日本聴覚医学会
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