AUDIOLOGY JAPAN
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総説
ストレプトマイシンによる難聴と内耳の遺伝性素因
立木 孝
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2010 年 53 巻 6 号 p. 653-663

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抄録

ストレプトマイシンの発見以来, 我が国では結核の死亡率が著明に減少したが, 同時に副作用としての難聴が発生した。ストレプトマイシンによる難聴は個人差が大きく, 難聴になる人は少なくても, 高度の難聴になった。難聴の症例が増加するうちに, その中に同じ家族, 或は家系内に複数の難聴者が発生する場合が少なくないことがわかった。いわゆる家族性ストマイ難聴である。
家族性ストマイ難聴症例の家系図を仔細に検討するうちに, 難聴者は必ず母系に発生する (母からのみ伝わり, 父からは伝わらない) ことがわかった。母系に遺伝する遺伝病として, ミトコンドリアの異常が検討され, その結果, ミトコンドリアDNAの1555変異によるものと判明, 家族性ストマイ難聴は遺伝疾患であると結論された。更に家族性ストマイ難聴の家系メンバーを詳細に検討して行くと, その中にはストマイを使用せずに同じような難聴になる人がいて, その数は必ずしも少なく無いことがわかった。その結果, ストマイ難聴は, 生まれながらの内耳の素因 (家族性内耳性難聴) を持つ者にストマイが絡んで生じたもの, という考えが生まれた。家族性内耳性難聴自体は必ずしも母系ではないので, 「ストマイ難聴が家族性にあらわれる母系の難聴」, 更に今後ストマイなき時代の家族性ストマイ難聴, はどう出現するのか, 臨床聴覚学のひとつの問題である。

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© 2010 日本聴覚医学会
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