AUDIOLOGY JAPAN
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原著
一側性難聴事例における聞こえの障害と障害認識の経緯に関する検討
岡野 由実廣田 栄子
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2015 年 58 巻 6 号 p. 648-659

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抄録

要旨: 一側性難聴者4例を対象として, 聞こえの障害の実態と障害認識について, 自己評価尺度と半構造化面接を用いて検討し, 当事者の視点で後方視的に分析した。 自己評価尺度からは, 患耳側や騒音下の聴取, 音源定位などについて日常的に高い聞こえの困難度が指摘され, 心理社会的な課題には個人差を認めた。 叙述からは, 一側性難聴による聞こえの障害に関し, 4種のカテゴリと27種の概念が生成され, 難聴の自覚から社会生活上の課題に対処し受容していく個別の経緯と, 関連要因を検討した。 学童期から成人期までの一側性難聴による聞こえとコミュニケーションの障害についての心理的な受容と変容, 対処には共通性を認め, とくに, 思春期までの障害観の形成と発達課題の充実に, 養育者の心理状況や障害観等の影響が指摘された。 当事者の発達段階に応じた情報提供や同障者との交流など, 養育者と当事者に対する診断期からの長期的支援の視点の必要性が示唆された。

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© 2015 日本聴覚医学会
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