AUDIOLOGY JAPAN
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58 巻, 6 号
December
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 「情報科学の進歩と聴覚医学」
    伊藤 健
    2015 年 58 巻 6 号 p. 619-629
    発行日: 2015/12/28
    公開日: 2016/06/09
    ジャーナル フリー
    要旨: 過去約30年間における「情報科学」の進歩が聴覚医学の発展に与えた影響について, ①コンピュータによるモデルシミュレーション・②信号や画像の高速な解析・③組み込みデバイスの高度化の観点から自身の経験を中心として述べた。 コンピュータの進化により研究面・臨床応用面で大きな進歩が起こったことが改めて認識されたが, 今後の課題もいくつか挙げられた。 更なる情報科学の進歩による解決が期待される。
原著
  • 鶴岡 弘美, 石川 和代, 臼井 智子, 増田 佐和子
    2015 年 58 巻 6 号 p. 630-637
    発行日: 2015/12/28
    公開日: 2016/06/09
    ジャーナル フリー
    要旨: 2000年~2013年に新生児聴覚スクリーニングで refer となり, 当科での精査の結果, 最終的に両側難聴と診断された79名を対象とし, 難聴の程度と初診, 診断, 介入, 補聴器装用時の月齢について比較検討した。 難聴の程度と人数は, 軽度難聴3名, 中等度難聴35名, 高度難聴41名だった。 79名のうち50名 (63%) が月齢1ヵ月以下で受診していた。 診断の平均月齢は61名 (77%) が月齢3ヵ月以下で診断された。 介入開始の平均月齢は74名のうち, 50名 (68%) が月齢6ヵ月以下で介入が開始された。 補聴器装用開始は68名のうち, 37名 (54%) が月齢6ヵ月以下で補聴器装用を開始した。 高・重度難聴は中等度難聴より有意に早く介入され, 補聴器装用を開始していた。 これらの結果より早期発見, 診断, 介入, 補聴器装用は適切に行われていると考えられた。 しかし中等度難聴では介入, 補聴器装用開始時期のさらなる検討が必要である。
  • 水野 知美, 佐藤 輝幸, 高橋 辰, 石川 和夫
    2015 年 58 巻 6 号 p. 638-647
    発行日: 2015/12/28
    公開日: 2016/06/09
    ジャーナル フリー
    要旨: 秋田県では新生児聴覚スクリーニング (以下新スク) が開始されて13年以上が経過した。 現在では, 県内の新スク受検率は100%に達し, 新スク実施産科施設, 精密聴力検査実施機関, 療育機関との連携や, 難聴確定後の聴覚管理や療育体制が整い, 一定の成果を上げていると考える。 今回我々は, 新スクが開始された2001年から2013年までの当科でのデータをもとに, 精密検査受検率, 陽性的中率, 難聴確定児の追跡率, 初回精密聴力検査後の聴力変化について調査・分析を行った。
     初回 ABR の結果による陽性的中率は61%で, 日本耳鼻咽喉科学会乳幼児委員会による平成25年度の全国資料と当科の結果に大きな差異は認めなかった。 3歳以上を対象に, 初回 ABR と最終他覚的聴力検査, 自覚的聴力とを比較し, 生後3~6カ月時点の他覚的聴力検査で「難聴あり」と診断後も聴力変化があるため, 精密検査実施機関での長期的な聴覚管理の必要性が示唆された。
  • 岡野 由実, 廣田 栄子
    2015 年 58 巻 6 号 p. 648-659
    発行日: 2015/12/28
    公開日: 2016/06/09
    ジャーナル フリー
    要旨: 一側性難聴者4例を対象として, 聞こえの障害の実態と障害認識について, 自己評価尺度と半構造化面接を用いて検討し, 当事者の視点で後方視的に分析した。 自己評価尺度からは, 患耳側や騒音下の聴取, 音源定位などについて日常的に高い聞こえの困難度が指摘され, 心理社会的な課題には個人差を認めた。 叙述からは, 一側性難聴による聞こえの障害に関し, 4種のカテゴリと27種の概念が生成され, 難聴の自覚から社会生活上の課題に対処し受容していく個別の経緯と, 関連要因を検討した。 学童期から成人期までの一側性難聴による聞こえとコミュニケーションの障害についての心理的な受容と変容, 対処には共通性を認め, とくに, 思春期までの障害観の形成と発達課題の充実に, 養育者の心理状況や障害観等の影響が指摘された。 当事者の発達段階に応じた情報提供や同障者との交流など, 養育者と当事者に対する診断期からの長期的支援の視点の必要性が示唆された。
  • 斎藤 真, 新田 清一, 鈴木 大介, 岡崎 宏, 太田 真未, 坂本 耕二, 野口 勝, 藤田 絋子, 小川 郁
    2015 年 58 巻 6 号 p. 660-665
    発行日: 2015/12/28
    公開日: 2016/06/09
    ジャーナル フリー
    要旨: 補聴器装用経験のない, 良聴耳が中等度感音難聴の患者121例を対象に, 補聴器を適合させた直後 (初期調整後) と, 定期的に調整を継続した後 (定期調整後) で, 装用閾値や語音明瞭度がどのように変化するかについて検討した。 結果, 装用閾値は5周波数平均で34±5dBHL から30±6dBHL に低下し, 装用下の最良の語音明瞭度も90±10%から92±8%に改善傾向を認めた。 また, 各聴力レベル別の語音明瞭度を比較すると, 50dBHL では81±14%から84±12%に, 60dBHLでは88±10%から91±8%に改善傾向を認めた。 補聴器の適合を得られた後も定期的な調整を継続することで, さらに聞き取りを改善できる可能性があることが示唆された。
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