1996 年 39 巻 2 号 p. 109-114
突発性難聴後の長期経過の報告は今までいくつかみられるが, 老人性難聴が出現してくる程に長期の経過を観察した報告はほとんどない。 我々は, 1980年から1985年の間に突発性難聴により名大耳鼻科を受診して固定時まで聴力の経過を観察し得た349症例を対象として1994年にアンケート調査を行った。 また, アンケートに答えた人のうち82人に再度名大耳鼻科を受診してもらい聴力検査を施行した。 多くの例でこの長期期間中の聴力の変化はみられなかったが, 突発性難聴罹患耳あるいは健側耳において聴力低下を認めた例があった。 聴力低下を突発性難聴罹患耳に認めたものは年齢とは関係なかったが, 健側耳に認めたものは加齢による老人性難聴であった。 この健側耳に老人性難聴が出現する高齢群においても, 突発性難聴罹患耳聴力のさらなる低下は比較的起こりにくかった。