AUDIOLOGY JAPAN
Online ISSN : 1883-7301
Print ISSN : 0303-8106
ISSN-L : 0303-8106
感音難聴と加齢 薬物性難聴
森園 哲夫白石 君男武末 淳周防屋 祐司加藤 寿彦
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 39 巻 2 号 p. 115-121

詳細
抄録

感音難聴と加齢の研究の一端として, 薬物性難聴について検討した。
この研究は, 肺結核の治療として既にストレプトマイシンの注射をうけて感音性難聴を来した症例では, 加齢が聴覚にどう影響するかを知る目的でなされた。 総数159例のうち, 男性18名, 女性13名の合計31症例が検討の対象となった。 これらはストレプトマイシン注射直前, 3ヵ月から6ヵ月にわたる注射療法の終了直後, および満8年以上11年未満の経過を経た現在の3時点での信頼すべきオージオグラムがある症例のみに限られた。
われわれの予想に反して, ストレプトマイシンによる薬物性難聴は相加的でも相乗的でもなく, 注射直後に大きな聴力低下のある症例では, その後の加齢による影響は小さく, 逆に薬剤による聴力低下の小さな症例ではその後の加齢による影響が大きく, 結局現在の聴力レベルはすべての症例でほぼ同程度に低下していると考えられた。
加齢による老人性難聴と異なり, ストレプトマイシンによる薬物性難聴の程度は, ポジティブフィードバックの域を出ないと言うことが関係していると思われる。

著者関連情報
© 日本聴覚医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top