1996 年 39 巻 2 号 p. 130-134
従来よりABRは幼小児の難聴の早期発見に多大な貢献を果たしてきた。 しかしABRは検査音としてclick音を用いているため聴覚の低音部の評価は困難である。 我々はABRで評価しにくい低音部0.5kHz-1kHzの幼小児の内耳機能の評価を主目的に外耳道誘導蝸電図を施行したのでその実態を報告する。 対象は10ヵ月-2歳6ヵ月の幼小児7名。 症例3は0.5kHzおよび1kHzにおいて70dBまでCMの反応が認められた。 他にもABRでたとえ反応が悪くても, 低音部のCMは残存していることが認められた。 小児にも侵襲の少ない外耳道誘導蝸電図を利用することで幼小児の内耳機能を他覚的に評価することが可能であると推測された。 幼小児難聴の限られた残存聴力を活用, そして保護するためにも, このCMからの情報は補聴器のフィッティングに有効であると考えられた。