植物細胞壁中のキシランは,キシロースを構成単糖とする主鎖に対して,種々の側鎖や修飾基が付加された不均一な構造を有する分岐鎖多糖である.このような不均一な構造は,セルロースやリグニンなどの細胞壁中の他の成分との相互作用に重要な役割を担っているものと考えられている.一方,キシランは一般的にアルカリで抽出されることが多く,本来キシランにエステル結合を介して結合している修飾基などが脱離していることが多い.こうしたことから,植物細胞壁分解酵素の天然状態でのキシランの作用を考える際,本来の酵素活性を適切に評価できていない可能性がある.筆者らは,植物バイオマスがイオン液体(IL)に溶けていく様子を偏光顕微鏡によって観察した際,セルロース繊維を被覆していたリグニンやキシランが溶解される現象を見出し,これをキシラン抽出及び分離法として応用した.IL抽出法によって,アセチル基,フェルロイル基,クマロイル基などのエステル結合を介した修飾基,また,リグニンとの複合構造が残存した天然に近いキシランを抽出することに成功した.