応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:-受賞論文-】 各種糖質加水分解酵素・加リン酸分解酵素・異性化酵素の機能と応用に関する研究
森 春英
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2020 年 10 巻 3 号 p. 165-174

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抄録

糖質は,構成糖,結合様式,重合度などにより顕著な多様性を示す.潜在的な化合物も含め無限の化合物種を含有する.これらに作用する酵素も多種多様である.本稿では,筆者らが各種加水分解酵素やホスホリラーゼ,並びに異性化酵素等を対象とした構造機能相関研究を,酵素の応用利用や物質生産も含めて紹介する.GH13酵素群のdextran glucosidaseとミツバチ由来α-glucosidaseについて,基質特異性等に寄与するアミノ酸残基が特定され,これらの置換による酵素機能のドラスティックな改変が達成された.基質結合における誘導適合に伴う触媒促進と中間体安定化の機構も見出された.異性化酵素としては,オリゴ糖の構成糖を異性化する唯一の酵素cellobiose 2-epimeraseについて,酵素活性利用によるエピラクトース生産法が確立され,また触媒の分子機構としてcis-エンジオール中間体を経由する酸塩基による反応機構の提唱に至った.関連する単糖異性化酵素も新たに見出されている.ホスホリラーゼとしては,GH130 β-mannoside phosphorylaseに関して,基質特異性に基づく分類が進み,基質特異性に寄与するサブサイト +1と周辺構造が提唱された.糖質合成例としては,植物代謝調節物質として注目されるトレハロース6-リン酸を,マルトースを出発糖質原料とするワンポット反応系で合成した.

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© 2020 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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