応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:応用糖質科学シンポジウム】 マルトビオン酸の味質および物性改良効果について
林 佳奈子
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2020 年 10 巻 3 号 p. 160-164

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抄録

マルトビオン酸は,グルコースにグルコン酸が結合した酸性糖質であり,天然では蜂蜜に含有される古来より食経験のある素材である.マルトビオン酸自身は甘さが極めて弱くまろやかな酸味を呈し,クエン酸と比べると酸味の立ち上がりが穏やかで持続する味質特性を持つ.この持続する味質は,果汁風味,塩味に対してエンハンス効果を示し,ミネラルやアミノ酸の苦味や高甘味度甘味料の甘さの後引きに対してはマスキング効果を示す.味質以外の特性としては,ミネラルの可溶化状態を保つ働きに優れ,pH変化や加熱・冷却による析出を防ぐことで,ミネラルを多く含む食品の安定化に寄与する.またマルトビオン酸は,ミネラル吸収促進,骨密度維持,便通改善等の生理機能も確認されており,美味しい機能性素材としての活用も期待できる食品素材である.本稿では,マルトビオン酸の味質及び物性面の特性を活かしたアプリケーションについて紹介する.

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© 2020 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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