応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:―受賞論文―】 地域資源の高度利用に向けた「地産酵素」の製造・ 利用技術の開発
池 正和
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2021 年 11 巻 1 号 p. 42-49

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抄録

再生可能資源であるバイオマス資源は,化石資源利用に起因する種々の環境問題を軽減する可能性を有することから,その高度利用に関する取り組みが世界的に活発化している.国内では近年,地域バイオマス資源の積極的利用が重視されている.我々は,地域繊維質資源等の高度利用プロセス開発を継続的に行っており,筆者は特に地域での小規模生産を想定した微生物酵素の製造・利用に関して重点的に研究を進めている.酵素製造に関しては,可溶性糖混合液を原料とした,糸状菌Trichoderma reesei 繊維質糖化酵素群の効率的な生産系を構築した.本生産系において,高品質酵素液(タンパク質濃度40~50 g/L,濾紙分解活性約30 U/mL)の20日間以上にわたる長期製造を達成している.また,供給糖液組成等の制御により生産酵素組成が調節できること,廃糖蜜や繊維質糖化液等が利用可能であることを明らかにした.酵素利用に関しては,筆者らが繊維質資源の変換技術として構築したCaCCO(Calcium Capturing by Carbonation)プロセスにおける糖化工程の高度化を進め,二酸化炭素で糖化槽内を加圧して酵素糖化を行う「加圧糖化工程」を提案するとともに,自製酵素を用いた10 kg規模の糖化試験によりその有効性を実証した.

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© 2021 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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