応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:―受賞論文―】 β-1,2-グルカン関連酵素,タンパク質群の機能と構造
中島 将博
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2021 年 11 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

β-1,2-グルカンはグルコースのみから構成される糖鎖であるにもかかわらず,筆者の研究開始時点でβ-1,2-グルカン分解酵素としての遺伝子同定例は皆無であった.β-1,2-グルコオリゴ糖に作用する1,2-β-オリゴグルカンホスホリラーゼ(SOGP)同定をきっかけに,SOGP遺伝子クラスターよりβ-1,2-グルコオリゴ糖に結合するABCトランスポーターの糖結合サブユニット,ソホロースを基質として好むβ-グルコシダーゼを見出し,SOGPとともにこれらの立体構造も明らかにした.SOGPを用いたβ-1,2-グルカン大量合成法を確立し,この糖鎖を炭素源として生育した原核生物,真核生物からそれぞれβ-1,2-グルカナーゼ(SGL)を精製単離,遺伝子同定にも成功した.さらにこれらの組換え酵素の機能と構造も明らかにした.この発見により,糖質加水分解酵素ファミリー144と162が新たに創設された.また,前者のSGLホモログよりβ-1,2-グルカンからソホロースを遊離する新規酵素を発見した.後者のSGLの反応機構は,触媒残基の位置が両方とも特殊なこれまでの糖質加水分解酵素にないタイプであった.

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