応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:―受賞論文―】 グルクロノキシランのナノテクノロジーへの応用
北村 進一 寺田 喜信鈴木 志保松野 研二
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2022 年 12 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

広葉樹に含まれる主要なヘミセルロースである4-O-メチルグルクロノキシラン (GXと略す) が,疎水性物質を水へ分散する機能を有していることを見出した.分散される物質は,カーボンナノチューブ (CNT) の他,化学物質 (色素や医薬品・化粧品) など広範囲な疎水性物質に及ぶ.今回の開発研究では,主にCNTの分散のメカニズムを解明するとともに,この分散技術をナノテクノロジーに応用して製品開発を行った.電気材料系のナノテクノロジーの分野では,静電気を発生しない透明プラスチックや電磁波遮蔽シリコーンゴムの開発研究を行った.さらにセルロースナノファイバーとのコンポジットには,電気特性のみならず,高強度,低熱膨張係数など多くの優れた特性のあることを見出した.バイオナノテクノロジーでの利用に関する研究では,単層CNTをガラス上に集積させた細胞の足場が,間葉系幹細胞を特異的に骨細胞に分化することを見出した.今後,GXは,医薬・化粧品,化成品,プラスチック,電池などの製造過程で広く使われるものと考えられる.

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© 2022 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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