2023 年 13 巻 1 号 p. 32-37
地球上で最も豊富に存在するバイオマスである植物細胞壁は,脱炭素社会の構築に向けて重要な資源であることは言うまでもない.細胞壁多糖の一成分であるペクチンは,主に双子葉または非イネ科単子葉植物の一次細胞壁および中葉に局在し,ゲル化剤やタンパク質分散安定剤などとして利用されているものの,食品残渣中には多量に残存している.ペクチンは自然界で最も複雑な構造を有する多糖の一つであり,植物種などによりバリエーションはあるが,一般的には7種の異なる糖鎖領域が共有結合して巨大分子を形成している.本研究はペクチンの高度利用化を目的に,ペクチンおよびその分解酵素についての基礎的知見を明らかにするとともに,それらを用いた応用研究を行ったものである.