2024 年 14 巻 1 号 p. 2-7
地球規模での気候危機を受けて,世界は脱炭素社会の構築に舵を切り始めており,その特効薬としてサーキュラーバイオエコノミー(循環型で生物圏に優しい経済活動)への転換が望まれている.セルロース系バイオマスの利用は,化石資源に頼らない社会の構築には不可欠であり,そのために最も低エネルギーな変換手法としての酵素糖化が再び注目を集めている.セルロースの分解はセルロースという不溶性の基質表面で起こる酵素反応であるため,これまでの溶解した基質に対する酵素学をそのまま適用することは難しかったことから,著者らは長年「固液界面における酵素反応」の概念構築を行ってきた.セルロース表面におけるセルラーゼの密度に着目した生化学的研究,生物物理学的手法を用いた酵素分子の観察,さらにその結果を用いたセルラーゼシミュレータの構築と,プロセッシブセルラーゼの進化を中心に,著者らが歩んできた「セルラーゼ学」を概説する.