応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
Online ISSN : 2424-0990
Print ISSN : 2185-6427
ISSN-L : 2185-6427
総説―受賞論文―
新規な糖質関連酵素の立体構造解析に関する研究
伏信 進矢
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 14 巻 1 号 p. 8-13

詳細
抄録

糖質関連酵素は各種糖質の分解や変換において重要な酵素群であり,驚くべき多様性を誇る.本研究では,新規な糖質関連酵素の立体構造を主にX線結晶構造解析の手法を用いて決定し,それらの基質認識機構および反応機構を明らかにした.白麹菌の酸性キシラナーゼでは好酸性の鍵となる残基がAsp37であることを示して,変異体を用いた詳細な動力学的解析を行った.糖質ホスホリラーゼでは,アノマー反転型ホスホリラーゼが糖転移酵素よりも糖質加水分解酵素と似た立体構造と反応機構を持つことを示して,糖質関連酵素の分類法の変更を促した.ビフィズス菌ではヒトミルクオリゴ糖の代謝酵素群および食品中の糖質の分解酵素群の立体構造決定を行った.GH127に属するβ-L-アラビノフラノシダーゼでは,これが糖質加水分解酵素で初めての,システインが求核触媒として働く「システイングリコシダーゼ」であることを示した.これらの新規な糖質関連酵素の立体構造決定を通じて,応用糖質科学において糖質の有効利用につながる重要な基盤となる知見を提供した.

著者関連情報
© 2024 一般社団法人 日本応用糖質科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top