応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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総説―受賞論文―
グリコーゲンの酵素による製造方法の確立,量産化,食品・化粧品・医薬品分野への応用
角谷 亮 梶浦 英樹古屋敷 隆柳瀬 美千代大段 光司栗木 隆
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2024 年 14 巻 1 号 p. 40-45

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抄録

グリコーゲンは天然に広く存在する高分岐多糖であり,主に生体内でエネルギー物質として働いている.一方,免疫賦活効果などエネルギー以外の役割に関するいくつかの論文が報告されているが,その詳細なメカニズムはよくわかっていなかった.我々は,人々の健康に寄与する素材としてグリコーゲンを産業的に利用することを考え,酵素を用いて植物原料からグリコーゲンを合成する方法を開発した.本方法で合成したグリコーゲンは,大きさ,形状,分岐構造など,種々の物理化学的性質が天然のグリコーゲンと極めて類似していた.我々はグリコーゲンの生理機能研究を実施し,免疫賦活効果や腸内環境改善効果,脂質代謝改善効果,肌質改善効果,認知機能改善効果など,様々な効果を見出した.また,ナノ粒子かつ分岐構造を多数持つグリコーゲンの構造的特長を医薬分野で利用することを考え,グリコーゲンの非還元末端に官能基を付加することで,核酸や抗体,ペプチドなどの機能性分子を導入する方法を開発した.ワクチン用途や抗がん剤用途での有効性を示すデータが蓄積されてきており,現在,さらなる研究を進めている.

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© 2024 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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