応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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総説―受賞論文―
食物繊維素材環状四糖水飴(テトラリング®)の開発
安田 亜希子 大倉 隆則川島 晶杉本 真智子角田 省二国吉 三枝子
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2024 年 14 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

食物繊維は,生活習慣病の予防に役立つ一方で,市販されている一般的な食物繊維素材は分子量が大きく粘度が高いことから,食品の食感や味に悪い影響を及ぼすこと,また食品加工のプロセスにおいても作業性が悪いことが課題となっている.我々は,土壌から環状ニゲロシルニゲロース(Cyclic nigerosylnigerose; CNN)生成酵素生産菌を発見し,澱粉からCNNの結晶および水飴の工業スケールでの製造に世界で初めて成功した.さらに,製法の改良を試み,CNN生成酵素にサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとイソアミラーゼを組み合わせることで,食物繊維含量を維持したまま分子量を低下させ,実用的な水分活性値と粘度の両立を可能にする技術を開発した.得られたCNN水飴は,食物繊維含量は固形分当たり76%(酵素-HPLC法)で,重量平均分子量は807と小さく,適度な甘味(甘味度;25)を示した.本水飴は,一般的な食物繊維素材に比べて澱粉の糊化・老化に影響を及ぼしにくく,タンパク質の変性も促進しにくく,様々な食品に配合しても,食感や味に与える影響は少なく加工適性も良好であった.

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© 2024 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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