応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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ミニレビュー―応用糖質科学フレッシュシンポジウム―
過熱水蒸気を用いた炊飯米麦の特徴―食味および品質向上のメカニズム
竹満 初穂 佐古 圭弘北村 進一
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2025 年 15 巻 2 号 p. 108-114

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抄録

連続式過熱水蒸気炊飯技術は,炊飯米の品質向上を実現する革新的技術として注目されている.本稿では,同技術がもたらす食味や品質向上のメカニズム,ならびに最新の研究成果について概説する.過熱水蒸気を用いた連続炊飯では,コメはベルトコンベア上で蒸気による均一な加熱と上部からの加水により中心まで糊化される.その結果,米粒内部の細胞構造が保持されており,澱粉粒のなかのアミロースが溶出しにくいため,炊飯米を保存しても老化しにくく,おいしさが保たれる.また,炊飯米の冷凍耐性が向上するメカニズムについても,細胞構造の保持とアミロース溶出の抑制の観点から考察した.さらに,蒸気炊飯過程における上部からの加水が,無機ヒ素を効率的に低減する効果を有することが示された.大麦への応用においては,香気化合物の分析と官能評価の結果から,蒸気炊飯により大麦特有の風味を改善できることが確認できた.これらの成果は,食品の安全性向上や官能特性の改善のみならず,フードロス削減といった社会的課題の解決にも寄与する.我々は,今後もこの技術の応用展開を推進し,さらに詳細なメカニズムの解明に取り組んでいきたいと考えている.

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