応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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総説―応用糖質科学シンポジウム―
β-GalNAcに作用する新規糖質分解酵素群の探索と構造機能解析~酵素の分子進化と機能的多様性を紐解く~
澄田 智美
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2025 年 15 巻 2 号 p. 99-107

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抄録

β-N-アセチルガラクトサミン(β-GalNAc)含有糖鎖は複合糖質として生物に普遍的に存在し,多様な生命現象の一端を担っている.β-GalNAcを特異的に認識して加水分解する酵素はβ-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(β-NGA)と呼ばれるが,我々は以前,非還元末端のβ-GalNAcのみに作用する細菌由来のエキソ型β-NGAを報告し,糖質分解酵素ファミリーGH123を設立したが,これまでの報告では,陸上土壌と宿主感染型の細菌由来のβ-NGAに限られていた.そこで本研究では,既報の酵素が発見された環境とは全く異なる,深海環境ゲノム情報とドメイン検索を用いて新規酵素の探索を行った.その結果,細菌・古細菌・真核生物のすべてに分布する4系統の新規酵素グループを同定した.すべてのグループの酵素の機能解析と立体構造解析から,既報のGH123酵素を含む5系統の酵素は,系統的にかなり離れているが,酵素の立体構造からすべての酵素はホモログ酵素であり,アミノ酸配列の変異や挿入の蓄積によって,基質特異性がオリゴ糖遊離型,オリゴ糖/単糖遊離型,単糖遊離型と多様化していることが明らかとなった.

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