抄録
各種の新規な糖質関連酵素の立体構造解析を行い,その機能を明らかにする研究を行った。本論文は,それらの一連の研究について,以下のとおり述べたものである。(1)白麹菌由来のGH11酸性キシラナーゼCの立体構造を決定し,同じ菌が生産するGH11中性キシラナーゼBとともに変異体を作成して解析を行い,その至適pHが決定されるメカニズムを調べた。(2)超好熱性古細菌由来のGH57に属する4-α-グルカノトランスフェラーゼを用いてその構造と機能を明らかにした。(3)GH94に属するキトビオースホスホリラーゼおよびセロビオースホスホリラーゼの構造解析を行い,コンピュータ解析と阻害剤を用いた解析を行った。これらの反転型糖質ホスホリラーゼは,反転型糖質加水分解酵素と進化的関連があることが明らかになった。糖質関連酵素はフォールドの種類が多くバラエティが豊富であるために,立体構造の解明を通じて,それらの分子進化の道筋も推測可能となる点が非常に興味深い。