2014 年 4 巻 3 号 p. 193-201
清酒製造で最も重要な蒸米の酵素消化性に関わる要因を研究した。まず,澱粉の組成や構造が大きく異なった胚乳貯蔵澱粉変異体米を用いて,澱粉の分子構造と蒸米の酵素消化性との関係について調べた。その結果,原料米の澱粉中のアミロース含量とアミロペクチンの側鎖構造が蒸米澱粉の老化と関連があり,その結果蒸米の酵素消化性に大きく影響することがわかった。すなわち,アミロース含量が少ない米ほど,また,アミロペクチンの側鎖が短いほど,澱粉の老化が遅く米が硬くなりにくいため,酵素消化されやすかった。次に,清酒製造に用いられる品種では,アミロース含量にあまり差がないためアミロース含量が酵素消化に及ぼす影響は少なく,蒸米の酵素消化性は主にアミロペクチンの側鎖構造に原因する老化性に従うことが明らかになった。さらに,イネ登熟期の気象データと澱粉特性および蒸米酵素消化性との関係を解析し,アミロペクチン側鎖構造および蒸米の酵素消化性は,イネ登熟期の平均気温と高い相関関係を示すことが明らかになった。この結果から,イネ登熟期の気温によりかなり高い精度で原料米の酵素消化性に関する酒造適性を予測できることが明らかとなった。