2022 年 11 巻 1 号 p. 37-50
本研究は,核軍縮における人々の価値観および世論の構造の分析を目的とした調査データの収集とデータ分析のメタ・リサーチ・デザインをまとめたものである.核軍縮が停滞する国際社会において,外交以外の核軍縮を後押しする手段の模索は重要な課題である.国家の安全保障政策を変えるためには,核抑止が存在してもなお核軍縮を選択するだけの効用が必要になる.世論は政府に影響する変数のひとつであることから,本研究は核問題に関する人々の価値観に関する調査し,ひいては世論の影響力を分析することを目指す.国家の置かれた環境によって世論は変化するものであるため,本研究では国家を被爆国・核保有国・潜在的核保有国・非核保有国の4群に分類し,それぞれに属する国家で調査データを取得し,国内・国家間・群間の比較分析をおこなう.それらによって核抑止と核軍縮に関する価値観と構成要因を検証し,核軍縮に賛同する世論を形成するための条件を探る.