データ分析の理論と応用
Online ISSN : 2434-3382
Print ISSN : 2186-4195
論文
「考え方の筋道」
—数量化Ⅲ 類分析でみる日本人の国民性継続調査データの意識構造の変化—
林 文
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2012 年 2 巻 1 号 p. 1-16

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抄録

1953 年から5 年ごとに統計数理研究所の国民性調査委員会によって継続されている「日本人の国民性」調査から,林知己夫は数量化Ⅲ 類によって,日本人の特徴としての「考え方の筋道」を見出してきた.本稿では,その中心的な考え方とされる義理人情,伝統対近代,科学文明観の考え方について,最新の調査を含めて数量化Ⅲ 類による分析を行った.義理人情的回答とされた回答群が第一次的に表れる傾向は,1990 年代まであったが,2000 年以降は二次的なものとなっている.また,伝統対近代については,1953 年には伝統的とされる回答が固まり,強い結びつきを示していたが,次第に崩れて,科学文明観もその中で位置を変えてきた.現在はその延長上とはまた違う動きもみられている.異なる文化間の考え方の比較は,個々の質問の比較だけでなく,大きな枠組みの中で見出され,個々の質問を少し変えても変わらない構造として捉えることが大切で,数量化Ⅲ 類は,こうした様相を捉えるのに有効な分析ということができる.

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© 2012 日本分類学会
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