本論文は, 軽度認知症者の自己高揚を促すための電子日記システムのコンセプトの提案について論じたものである. 認知症者では, これまで開発が困難とされてきた, 精神生活を直接支援する福祉機器が必要となる. 本研究では, 心理学的手法を用いた4項目からなる開発指針を設定し, それに基づき, 近時の自己高揚経験 (達成経験・親和経験) を抽出し呈示するという, 電子日記システムのコンセプトを提案した. 呈示内容として達成経験と親和経験が必要であることは, 調査結果から心理学的に裏付けられたものであり, それらの内容を読むことで自己高揚が促されることについても, 認知症者を対象とした実験結果から示唆された.