バイオメカニズム
Online ISSN : 1349-497X
Print ISSN : 1348-7116
ISSN-L : 1348-7116
3部 感覚と学習
ガラス研削作業における研削量調整技能の分析
遠藤 博史石川 純梅村 浩之阿部 健太郎松田 次郎
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 20 巻 p. 147-156

詳細
抄録

熟練技能を継承していくためには, 技能の背景にある科学的根拠を示すことが重要である. 本研究では, 熟練した手わざ技能の人間側の要素を明らかにすることを目的として, ガラス研削作業の力の分析を行った. 若手作業者は研削する力の強さにメリハリがなく, 常に力を出し続けた状態であるが, 経験年数の増加とともに力にはっきりした強弱が表れた. 若手作業者のやり方は, 回転する研削皿に対して常に抵抗力を維持し続ける必要があり, 疲労の影響が大きくなると考えられた. 一方, 荷重点 (力の重心位置) は作業者によって異なり, ある1つのパターンに収斂することはなかったが, 数値解析の結果, 中堅以上の作業者の重心位置は力のばらつきの影響が出にくいパターンであることが分かった. 本実験の結果から, 手わざのガラス研削作業において, 疲労の軽減やばらつきの補償といった人間側の欠点を補う技能が明らかとなった.

著者関連情報
© 2010 バイオメカニズム学会
前の記事 次の記事
feedback
Top