2010 年 20 巻 p. 197-206
バイオメカニクスの分野において, 運動の基本である歩行を理解することは必要不可欠である. そのため, ヒトの歩行に関する解析は筋骨格モデルによるロボット工学的な理論解析を用いて明らかにされてきた. そこで, 本研究は生体特有の二関節筋の存在に注目し, 二関節筋と一関節筋を含めた最も単純化したモデルである大腿部の三対6筋の駆動機構による運動パターンとヒトの歩行軌道の関係を明らかにすることを試みた. この三対6筋の運動パターンには静的条件下における四肢先端部の出力方向制御をおこなう筋の協調制御パターンをもちい, その運動パターンで理論的に求めた下肢先端部の軌道がヒトの歩行軌道と非常に類似することを明らかにした. さらに, ヒト歩行時の軌道とその筋活動を動作筋電図学的解析により確認し, 下肢大腿部の三対6筋と筋の協調的制御パターンが歩行の軌道に関与していることを明らかにした.