2012 年 21 巻 p. 33-42
筆者らは, 重度障害者の自立的な生活支援を目的とし, 頸髄損傷などにおいても運動機能が残存しやすく, 自由度の高い随意運動が可能な 「舌」 に着目したインタフェースの開発を行っている. 本研究では, 単極誘導法により導出した下顎底部9カ所の表面筋電位から36通り (=9C2) の2点間電位差を算出し, 舌骨上筋群が密集した下顎底部全体の筋活動と舌運動とをニューラルネットワークで関連付けることにより, 口腔内に押しつけた舌の位置と力の同時推定を行った. その結果, 三角形状に配置した多チャンネル電極の貼付位置を並進方向に5mm, 回転方向に10度ずらした場合でも, 相関係数0.9以上, 平均自乗誤差10%以下の精度で舌の位置と力を推定できることが確認された. また, 誤推定を誘発する恐れのある嚥下, あくび, 開口動作をニューラルネットワークで識別し, マスク処理を施すことにより, 随意運動の推定誤差を90%以上も低減でき, 下顎底部の表面筋電位から舌の随意運動のみを正確に抽出できる可能性が示唆された.