2020 年 25 巻 p. 45-54
実際のスポーツ場面では, 光点灯に対する反応だけではなく, ボールなど対象物の動きを捉える能力がパフォーマンスに大きな影響を及ぼしている. そこで本研究は, 球技系の競技者を対象として, 視標の動き (visual motion) に対する視覚認知能力と反応時間の特性を明らかにすることを目的とした. その結果, visual motion刺激に対する反応時間 (visual motion RT) は, 光点灯刺激を用いた反応時間 (光点灯RT) に比べ有意に大きい値を示した. さらに, visual motion RTと光点灯RTの差分を算出した値をvisual motion認知時間と定義し, 異なる被験者群 (球技群と非球技群) で比較すると, 群間に有意な差が認められた. このvisual motion認知時間は, 滑動性追跡眼球運動 (パーシュート) の加速度と有意な相関関係が認められたことから, 中枢神経系の視覚情報処理を反映する指標であると考えられ, 個々のvisual motionに対する認知能力の違いを評価するための有効な手段となり得ることが示唆された.