桐生大学紀要
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緑色蛍光タンパク質強制発現大腸菌を用いたタンパク質発現に対する 糖の影響の解析
小林 葉子
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2019 年 30 巻 p. 17-25

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抄録

 大腸菌のタンパク質発現系は,タンパク質を人工的に得るための有用なツールの 1 つである.pET19b ベクターは, バクテリオファージ λDE3 溶原菌の lacUV5 プロモーターによって発現の調節される T7 RNA ポリメラーゼが T7lac プロモーターに作用することによって目的遺伝子を発現する.  本研究では,緑色蛍光タンパク質(GFP)を用い,T7lac プロモーターに制御されるタンパク質の発現に対する 種々の糖の影響を検討した.GFP 遺伝子(Gfp)を挿入した pET19b で形質転換した大腸菌 BL21(DE3)を,グルコー ス,ガラクトース,フルクトース,マルトース,ラクトース,スクロース,トレハロースを含む培地中で培養し, 大腸菌の生育及び GFP 発現量の変化を検出した.培養液中の糖の種類により GFP の発現パターンは異なり,グル コース,マルトースでは GFP の発現が抑制され,ガラクトース,スクロースでは,糖無添加の条件と類似の GFP 発現パターンを示した.フルクトース,ラクトース,トレハロースは,15〜24 時間の培養時間では GFP の発現を 抑制し,36~40 時間以上の培養で糖無添加の条件と同等の GFP の発現量を示した.また,グルコース及びマルトー スによって,大腸菌の増殖は抑制された.  以上の結果は,培養液中の糖の違いによって T7lac プロモーターによって制御されるタンパク質の発現を調節で きることを示した.糖によるタンパク質の発現制御には,大腸菌内への糖の取込みや代謝が関与すると考えられる. 糖の輸送体や代謝の阻害剤を用い,大腸菌におけるタンパク質強制発現系の発現調節についてさらなる解析が必要 である.

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© 2019 桐生大学・桐生大学短期大学部
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