抄録
盲導犬の皮膚細菌叢の形成過程において,飼育環境が及ぼす影響について検討した.
同時期に産まれたラブラドールレトリバーの子犬4頭とゴールデンレトリバーの子犬4頭を対象とし,パピーウォーカーへの委託前と委託後に,子犬の皮膚から微生物採取キット(メタフロキーパー)を用いて検体を採取した.
採取部位は頭頂部と左頬部の2か所とし,メタゲノム解析の手法を用いて皮膚細菌叢を解析し,パピーウォーカー委託前後におけるα 多様性(種の豊富さと均等さ)とβ 多様性(菌叢構造の類似度)を統計学的に比較した.
頭頂部ではパピーウォーカー委託後にα 多様性が高くなっており,有意差を認めた.
また左頬部においても有意差は認められなかったがα 多様性が高くなっていた.
β 多様性については,頭頂部・左頬部ともにパピーウォーカー委託前後で有意差を認めており,これは皮膚細菌の菌叢構造の類似度が低いことを意味している.
これらのことから,飼育環境の変化が子犬たちの皮膚細菌叢の多様性形成に寄与した可能性が示された.
犬の皮膚細菌叢は多様性を維持することで皮膚疾患の発症を防ぐと考えられており,盲導犬育成の一部を担うパピーウォーカー委託制度は,子犬の社会性の獲得という目的だけではなく,盲導犬の皮膚の健康を保つという意味においても重要な役割を果たしているといえる.