抄録
オートアナライザーを用いた温泉水中遊離残留塩素の自動分析法の検討を行った。検水にシアン溶液を加えると検水中の遊離残留塩素はシアンと反応してクロルシアンを生成する。多孔質膜のガス透過性を利用して検水から生成したガス体のクロルシアンを分離し、4-ピリジンカルボン酸-ピラゾロン吸光光度法で検出し、自動的に遊離残留塩素を比色定量するものである。その結果、検量線は1 mgCl/L まで直線性があり、検出限界値(S/N=3)は0.01 mgCl/L であった。実験室で調製した5種類の温泉水の添加回収実験では、変動係数(n=5)は0.05 mgCl/L で10%、0.94 mgCl/L で0.9%を示し、回収率は94~108%で良好な精度と回収率を示した。本法では遊離残留塩素はクロルシアンとして選択的に分離され、また、クロルシアンは4-ピリジンカルボン酸-ピラゾロンと選択的に反応し呈色することから、懸濁物質、着色成分や高濃度のNa⁺、K⁺、Ca²⁺、Mg²⁺、Cl⁻、SO₄²⁻、HCO₃⁻、SiO₃²⁻を高濃度含む試料であっても本法は妨害されなかった。また、本法は少量の検水(2.4 mL)で1 時間に20 試料の分析が可能であった。これらのことから、本自動分析は温泉水中の遊離残留塩素分析に有効な方法であると考えられる。