2017 年 2017 巻 1 号 p. 18-22
今国民は速い流れに足をすくわれそうな状況で、流れの中で佇んでいるように思える。2000年5月30日発表の高齢社会白書に於いて1999年10月1日現在65歳以上の高齢者人口は2109万人で総人口に占める割合は16。7%と発表された。医療・保健衛生の向上と生活環境の改善は日本人に世界1の長寿をもたらした。人口に占める高齢者の比率は推計を新たにするたびに増加に変更されている。高齢者世帯の所得も貯蓄も充実している。
一方、7月25日で要介護認定を受けた高齢者は280万人と発表された。1997年1月の厚生省予測において2025年に介護を必要とする高齢者は520万人(内230万人寝たきり)としたが、この数字も現状のまま推移すれば増加に変更されるのであろう。かつて脳血管疾患は死亡原因の第一であった。現在では1960年代に比較すると半減している。統計から推計すると毎年8万人近くが新たに脳血管障害の後遺症を持つ介護を必要とする高齢者となっていく。これまでなら脳血管障害の後遺症によって徐々に寝たきりになることを意味したのである。
長寿は健康に楽しく年を重ねるばかりでなく、長寿が許されたがゆえに、要介護から寝たきりになり死に至るまで数年間の無残な苦闘をもたらすのである。大多数の国民にとって、速い流れに足をすくわれ、死に至るのを待つように、順に命の輝きが薄れていく。
我々は宿命とも思えるこの状態を変えるとして21世紀リハビリテーション研究会を結成し、研究を重ねてきた。特別養護老人ホームなどの実施状況・効果を纏めた。また器具についてはその特徴や利用した屋内移動能力の改善状況を明らかにした。タキザワ式リハプログラムによる創動運動実施の医学的検証を進めること、その機序の解明に努力することを述べた。