蘚苔類研究
Online ISSN : 2424-2624
Print ISSN : 1343-0254
日本から報告されたイタチゴケ科ならびにヒムロゴケ科植物の再検討
秋山 弘之
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 12 巻 7 号 p. 175-181

詳細
抄録
Suzuki & Iwatsuki (2012, 2013),Suzuki (2017) により日本新産として報告されたイタチゴケ科・ヒムロ ゴケ科蘚類について,服部植物研究所に保管されている証拠標本を再検討した.その結果,(1) Antitrichia curtipendula,(2) Jaegerina scariosa, (3) Pterogonium gracile, (4) Pterogonium coreenseの4種を 誤同定に基づくものとして日本のフロラから除いた.(1) はシライワスズゴケForsstroemia noguchiiに 類似したスズゴケ属の1種,(2) はヒメコクサゴケIsothecium subdiversiforme,(3) はフトスズゴケ Forsstroemia neckeroides,そして(4)はミヤマハイゴケHypnum (Eurohypnum) leptothallumであった. シワナシチビイタチゴケの学名をNogopterium tsinlingenseとする見解は,P. gracile var. tsinlingense とLeucodon esquiroliiのタイプ標本の比較を行った上であらためて検討すべきであり,現状では日本産 植物はPterogoniadelphus(≡Felipponea)esquiroliiとするのが適当である.また,新種として記載さ れたNogopterium tenellumはヤマトキヌタゴケHomomallium japonicoaduncumの異名となる.さらに, 日本産のナガイタチゴケL. pendulusならびに日本には産しないL. brachypus, L. julaceusの合わせて 3種をPterogoniadelphusとする組み替えは,葉の形態の差異及び分子系統解析の結果からは支持され ず,3種ともにLeucodonにとどめるのが適当である.
著者関連情報
2021 日本蘚苔類学会
次の記事
feedback
Top