抄録
私は2023 年度に採択された科研費基盤C(課題番号23K02809)「コケ植物を対象とした分野横断的科学研究プログラムの開発」と題する研究を行っている.これまでに,フィールドとしているコケ庭を調査したところ,研究テーマとなりそうな事象が見つかっている(図1).スギゴケの群落の中で,普段ヨシズが覆っていて日陰の部分は緑色なのに対し,日向の部分は黄緑色をしていて,色の境界がはっきりしていた(図1).そこで本研究の目的は,「なぜ日向と日陰
でスギゴケの色が違うのか?」という問いへの答えを求め,上記の科学教育プログラムの研究テーマとして適切かどうかを評価することである.
日向のスギゴケは日陰に比べて11~21 倍の照度の光が当たるため,日陰のスギゴケよりも強光下での光合成効率が高い.この高効率化のために,日向のスギゴケは構造や色素の組成が日陰のものとは異なり,色が違うものと考えられる.