武道学研究
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アメリカ人シニア・ジュニア柔道強化選手のトレーニングとパフォマンスの心理的相関
松本 デービット武内 政幸
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2000 年 33 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

我々は,これまで数年間アメリカ人柔道選手を対象に,柔道競技(試合)に勝利するために必要な心理的要因について研究を行ってきた。そして,これまでの研究からは自己調整力や心理的な制御力のみならず個人の性格という側面が,競技上のストレスや不安を緩和し,よい成績に繋がるという知見を得ている。しかしながら,これらの結果以外に競技に先行するハードなトレーニング期間に柔道選手を支える重要な鍵となる別の心理的要因があるのではないかとも考えられた。
本研究は,シニア・ジュニア柔道強化選手を対象に,競技力のみならずトレーニングを予測するための心理的な変数を抽出することを目的としている。
対象となったのはアメリカ人のシニア・ジュニア柔道強化選手(90名)で,被検者には7種の心理テストが課せられた。これらのテストはアメリカ合衆国オリンピックトレーニングセンターでの二回に亘る合宿中に配布された。さらに二回の合宿中,それぞれの選手についての能力評価はコーチ全員によって評定され,最終的に合宿一ヶ月後のU.S.Senior National Championshipsにおいて指数化された。
その結果,次の知見が得られた。
1.楽観的,活動的,内省的な統制力,そして自信といった変数がすべてトレーニング結果を予測するものであった。すなわち合宿中,より楽観的で,より活動的で体力があり,結果に対してより内省的な統御があり,より自信を持っている選手は一様にトレーニングカが優れていた。
2.また,人当たりの良さ,希望,どの様なとろでも自己調整が可能といった項目に高い得点をつけた選手は競技力に優れていた。さらに,一方で合宿中,怒り,迷い,不安といった項目に低い得点をつけた選手は,その後の競技(試合)で良い成績を修めた。
3.これらの研究結果は,これまでの研究結果と関連させて,今後の研究の指針になると思われる。

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