武道学研究
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英国の大学カリキュラムでの剣道指導
本多 壮太郎ドッド イアン・パーカー・
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2004 年 37 巻 2 号 p. 35-45

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抄録

イングランド南西部に位置するグロースター州のグロースター大学は,英国の大学の中で剣道を大学のカリキュラムの1つとして位置づけている唯一の高等教育機関である。
この大学カリキュラムの1つである剣道は,2000年2月より導入され,現在まで日本人1名,英国人2名の講師陣によるチームティーチングにより,6週間と12週間の2つのコースの中で実践されてきている。本資料ではまず,イギリスでの剣道事情,どのような事情を経て英国の大学のカリキュラムとして採用されたか,カリキュラムの中でどのような学習目標が設定され,到達することが期待されたかを報告する。次に,実際にティーチングチームが,日英間の様々な違いを考慮し,どのように英国人大学生に日本の伝統文化である剣道を指導してきたか,彼らがこのコースのどこに興味をもち,どのように受け止め,どのような問題・課題に直面し,何を学んだかなど,2000年2月から,2003年6Bまでの3年半に亘る調査結果を報告する。
コースでは,英国人の特性を考慮して,反復的稽古法に陥らぬよう,ビデオやプリントなどの教材の活用,チームティーチングやディスカッションを通して様々な角度からの指導アプローチを実施した。調査には,参与観察法,学生へのインタビュー,毎回の授業に対するダイアリー,全授業の終了後に提出された課題レポート,授業評価に関するアンケート調査などによる質的方法による調査方法が採用された。
結果として,大学生は最初,打つ・打たれることへの不安や恐怖,そして慣れない動作をなかなか習得できないことへの欲求不満を感じながらも,人間形成を唱える武道としての剣道の礼儀,相手や勝敗に対する考え方についての知識を得るにつれ,彼らがそれまでに取り組んできたスポーツとの考え方との違いに魅了されるようになった。ここでの資料が海外での剣道指導に関して有益な一資料になることを期待する。

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