武道学研究
Online ISSN : 2185-8519
Print ISSN : 0287-9700
ISSN-L : 0287-9700
Fencing・Fleuretの技術に関する研究
―Coup de jetageに関するキネマティクス的考察―
和田 武真上田 大堀居 昭山田 保井川 正治
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 41 巻 2 号 p. 13-24

詳細
抄録

研究は審判器の登場にともなって新しく開発されたFleuretの技術であるCoup de jetageに着目して,熟練者の剣先の速度と関節の角度,角速度から,キネマティクス的に動作を分析し特徴を得ることを目的とした。
本研究の被験者は,国際大会出場経験をもつ男性熟練者9名(競技歴12.3±3.6年,年齢20.8±2.8歳,身長169.1±4.2cm,体重64.4±43kg)であった。ターゲットマネキンに向かってcoup de jetageを5試技行い,3分間の休息を挟んでから,coup de jetage-fanteを5試技行わせた。各試技は,ハイスピードカメラによって撮影し,剣先の速度,関節の角変位,関節の角速度を測定項目とした。
下記に示す測定条件をもとに実験を行った。
1)被験者には,あらかじめターゲットマネキンが対戦相手であるというイメージで行うよう伝えた上で任意の間合いから各試技を行った。
2)試技は,ターゲットマネキンのマスク内に設置した発光ダイオードの点灯を合図とし,任意のタイミングで開始することとした。
3)ターゲットマネキンの高さは,被験者のen garde(構え)姿勢時の肩の位置にターゲットマネキンの肩の位置を合わせ統制した。
4)使用した剣は,各被験者が普段使用しているものとした。その結果,熟練者のCoup de jetageの動作は以下の2つの動作タイプに分類することができた。
(1)肘関節の伸展から手関節の尺側偏位に至るまで,角速度の最大値の増大がみられ,手関節の尺側偏位を制動することによって剣をしならせる(A群)。
(2)肘関節の伸展から手関節の尺側偏位に至るまで,角速度の最大値は肘関節がもっとも高く,肘関節の伸展と手関節の尺側偏位を制動することによって剣をしならせる(B群)。

著者関連情報
© 日本武道学会
前の記事 次の記事
feedback
Top