地質調査研究報告
Online ISSN : 2186-490X
Print ISSN : 1346-4272
ISSN-L : 1346-4272
論文
関東平野における沖積層土壌の化学組成-土壌地球化学図の基礎研究(第2報)-
寺島 滋太田 充恒今井 登岡井 貴司御子柴 真澄谷口 政碩
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 52 巻 8 号 p. 347-369

詳細
抄録

土壌地球化学図の作成に関する予察的研究の一環として,関東各地の沖積層から柱状試料を採取して主・微量元素を分析し土壌の母材や元素の広域分布特性,地球化学的挙動等を研究した.沖積層土壌の母材は,主として火山噴出物と河川由来砕屑物であり,両者の割合は地形・地質的な要因で変化する.沖積層土壌における元素濃度の鉛直変化は,火山灰質土のそれに比べて小さかった.これは堆積速度が速く, 表層~下層の風化度や腐植含有量の差が小さいためと考えられた.沖積層土壌中の砂質粒子は主として河川由来である.砂質粒子は風化・変質に伴って微細化するが,この際アルカリ・アルカリ土類金属が溶出・流失し,細粒部分ではアルミニウム,チタン,各種重金属等が相対的に高濃度になる.山間部の規模が小さい沖積面では,集水域の基盤地質と土壌の化学組成の特徴は類似する.広大な平野部を流下する河川の下流域では,基盤岩砕屑物は均質化されており,粒度組成の相違が化学組成を変動させる主因である.沖積層土壌の化学組成は,同一地域の火山灰質土に比べてアルミニウム,チタン,重金属類に之しく,アルカリ・アルカリ土類金属に富む特徴があり,概括的には河川や湖沼の堆積物に類似する.

著者関連情報
© 2001 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
前の記事 次の記事
feedback
Top