地質調査研究報告
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論文
関東平野の土壌中微量有害元素(As, Sb, Pb, Cr, Mo, Bi, Cd, Tl)の地球化学的研究 -土壌地球化学図の基礎研究(第3報)-
寺島 滋太田 充恒今井 登岡井 貴司御子柴 真澄谷口 政碩
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2002 年 53 巻 11-12 号 p. 749-774

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抄録

土壌地球化学図の作成に関する予察的研究の一環として,関東各地から採取した火山灰質土壌と沖積層土壌中の微量有害元素(As, Sb, Pb, Cr, Bi, Cd, Tl)を分析し,地球化学的挙動を研究した.柱状試料における元素濃度の鉛直分布を支配する要因としては,土壌母材の起源,堆積環境,粒度組成,生物濃集,続成・風化作用の影響等が重要である.Mo, Cr以外の元素は最表層部で高濃度を示す場合が多いが,これは人為的な汚染ではなく,主として生物濃集と考えられた.かって海水の影響下にあった土壌はAs, Sbに富む傾向があり,海水中元素の吸着を示唆する.関東平野の火山灰質土壌の母材は,北部では主として赤城山,男体山起源の安山岩質噴出物,南部では富士山起源の玄武岩質噴出物である.土壌中の多くの重金属は,母材の起源を反映して北部よりも南部で高いが,As, Pb,Bi, Tlは概括的には南部よりも北部で高濃度を示す.沖積層土壌には,基盤岩由来の砕屑物が混入する等の理由で系統的な南北変化は存在しない.微量有害元素のほとんどは,テフラ層が風化しても低濃度にならず,As, Sb, Pb等では最大20%程度の濃度増加が推察された.地殻と土壌中の元素濃度を比較した結果,As, Sb, Pb, Biは土壌中に顕著に濃集される傾向があり,その原因としては生物濃集,海水の影響,風化・続成作用の影響,広域風成塵の混入等が考えられた.

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© 2002 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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