地質調査研究報告
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福島県における温泉・湧水中の天然放射性核種
金井 豊
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2002 年 53 巻 7-8 号 p. 559-571

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抄録

温泉・湧水など環境水中のウラン系列核種の濃度と,系列核種相互の関係を明らかにするために,福島県を中心に温泉・鉱泉などの湧水を調査した.その結果,ウラン濃度は花崗岩類,片麻岩,第三紀堆積岩,火山砕屑岩類等のうち花崗岩類分布地域の温泉に相対的に濃度が高く存在し,基盤岩における濃度との関係が示唆された.しかし,絶対量についてはかなり低濃度で,その多くは0.2ppb以下であった.低濃度である原因としては,地下での還元的な環境が原因と推定された.また,U-234/U-238放射能比,Ra226/U-234放射能比,Rn-222/Ra-226放射能比はいずれも1よりも大きい傾向にあり,娘核種の方が多く溶解していることが明らかとなった.ウラン,ラジウム,ラドン濃度と水質等との間に明らかな関係は見いだせなかったが,ラジウムに関しては水温と相関があるような傾向がみられた.花崗岩地域での試料についてみると,ウランは酸化還元電位,溶存酸素量に正の相関を,pHに対して負の相関を示した.ラドンは溶存ラジウム量から推定されるよりもはるかに過剰にとけ込んでいることが判明した.この過剰ラドンの供給源としては地下の岩石中ラジウムと考えられ,地層中の細かな水みちを通過する間に岩石表面のラジウムからラドンが供給されるというモデル計算を行って,定性的な確認を行った.

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© 2002 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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