地質調査研究報告
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論文
瀬戸内高マグネシア安山岩及び玄武岩の希土類元素組成:日本海拡大時におけるマントルウエッジの組成変化に関する示唆
下田 玄長井 正博森下 祐一
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2004 年 55 巻 1-2 号 p. 31-38

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抄録

日本海拡大が西南日本のマントルウエッジに及ぼした影響について評価するために、瀬戸内火山岩類の初生的な高マグネシア安山岩(HMA)と玄武岩について希土類元素を測定した。噴出年代の古い大阪地域のHMA(13.9 Ma)は、噴出年代の若い小豆島地域のHMA(12.7 Ma)に比べ、軽希土類元素の濃度が高く、かつ重希土類元素濃度が低い。この希土類元素パターンの特徴を説明する為に、混合計算を行った。その結果、30~70%のアセノスフェリック成分(MORB source like materials)と、大阪地域のHMAから見積もられたマントル成分70~30%が混合すれば、小豆島HMAと玄武岩の希土類元素パターンが説明できることが解った。この結果は、日本海拡大時にアセノスフェアーが、西南日本のマントルウエッジに貫入したことを示唆する。すなわち、高温のスラブの沈み込みとともに、高温のアセノスフェアーの流入が、この地域の異常な高温状態を達成した可能性がある。この観点から見ると、瀬戸内地域や外帯における火成活動の成因、西南日本の回転、日本海拡大という一連の現象が、整合的に理解できる。

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© 2004 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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