2018 年 69 巻 3 号 p. 201-210
全岩化学組成分析用の粉末岩石試料作成プロセスにおける,粉砕器具及び機器からのコンタミネーションの程度を検討した.鉄乳鉢とタングステンカーバイド乳鉢,めのうボールミルとタングステンカーバイドミルを用いて3通りの組みあわせで岩石粉末試料を作成し,粗粉砕及び微粉砕のそれぞれの過程でのコンタミネーションの程度を調べた.検討試料には玄武岩,玄武岩質安山岩,デイサイト及び流紋岩を用い,主成分組成と微量成分組成に対する影響を検討した. 3通りの組合せの粉砕方法で作成した4つの組成の試料の分析結果は,粗粉砕に用いた試料の組成の違いに起因すると思われる差が認められたものの,主成分元素においてはコンタミネーションの影響は検出されなかった.微量元素組成においても,試料間の初生的な組成差と思われる分散が大きいものの,タングステンカーバイドミルを用いた粉末試料に対する明らかなタングステンと若干のコバルトのコンタミネーション以外は,系統的な組成差は認められなかった.