本研究の目的は,沖縄県農漁村B集落の文化を基盤とした地域力を明らかにし,今後の近助ケアシステムづくりへの示唆を得ることである。
B集落の介護経験のある当事者5人のインタビュー内容,集落の伝統行事に参与観察した内容を質的記述的に分析した。その結果,87のキーセンテンス,15のサブカテゴリー,5のカテゴリーが抽出された。
B集落は多世代に渡る顔なじみの関係が維持されており,【地縁による強いつながり】が基層にあった。公民館では高齢者の交流促進や介護家族の負担軽減の場,緊急時の相談場所となっており,集落の情報収集・発信の役割機能を備えていた。また,公民館を活動拠点としている民生委員はB集落の高齢者を支援しており,B集落では【信頼の厚い公民館・民生委員による高齢者ケア】が実践されていた。
B集落の住民同士は,お互いを気にかけ支援の必要な高齢者を見守り,特に認知症高齢者と家族に直接的・間接的な支援を行い,【住民同士による我が事としての支え合い】によるインフォーマル・サポートの基盤がみられた。
さらに,120年以上の歴史を有し大事にされている伝統文化“豊年祭”は,若者世代の地域への思いを育み,【伝統行事で強化される多世代間のつながり】を介して【住民総出で継承する伝統行事】という豊かな社会資源を有していた。以上の事からB集落は,文化的基盤に基づいた,小さな集落でも支えあい生きていける地域力があることが示唆された。