文化看護学会誌
Online ISSN : 2433-4308
Print ISSN : 1883-8774
総説
中国老年看護の発展に向けた一考察
― 日本老年看護の概観を通して ―
張 平平正木 治恵
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キーワード: 老年看護, 日本, 中国
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2010 年 2 巻 1 号 p. 1_40-1_47

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抄録

 世界人口の高齢化につれ,先進国や新興国,開発途上国を問わず世界各国における高齢者への関心が高まっている。高齢者をとりまく環境が急速に変化している中,多角的側面から高齢者に焦点をあてた学問体系が求められる。
 戦後の日本は,経済成長に伴い,医療保健福祉制度が整備されつつあるなか,先進諸国の中でも類を見ない速さで超高齢社会に突入した。このような社会要請のため,1990年に老人看護学が成人看護学から独立し,老年看護の学問としての確立が一気に加速化された。20年間の発展を通じて日本の老年看護は,これらの老年看護学の専門知識を活用し,教育や研究,そして,実践の場で専門性を充分に発揮することにより,多くの実績を蓄積し,高齢化の急速な進展に立ち向かいながら多大な貢献を成し遂げている。
 目覚しい経済発展を迎えてきている近年の中国は社会保障制度が未だ健全に整備されないまま高齢化社会に臨んだ。先立った日本老年看護の概観により,中国の老人医療社会保障システムの整備が契緊の課題となる同時に,基礎看護教育における老年看護学の確立や大学院教育の強化,教員の資質確保,老年看護専門看護師の育成,老年看護学会の設立等の老年看護学という学問体系の形成に関する具体的な取り組みも今後の課題と示唆された。更に,これらの課題を解決するには,アジアの手本となる日本老年看護の国際発信が必要と示された。

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