2012 年 4 巻 1 号 p. 1_66-1_76
本邦の精神医療の喫緊の課題として,(1)病床削減と地域移行,(2)総合病院精神科の危機への解決策が模索されている。筆者らは,2008年10月から,千葉県東部の基幹病院精神科で起きた診療機能の破綻危機に際し,“組織行動学的プロジェクトマネジメント手法”を援用して,『精神科救急機能を維持』しながら,医療現場の『労働環境改善』を図るというミッションに取り組んだ。2009年度は,『肥大した業務量の適正化』を目的に掲げ,病床ダウンサイジングとアウトリーチシフトを同時に進めた。work breakdown structureや包括的情報ネットワークを用いて,訪問看護ステーション,地域精神医療推進部などのアウトリーチ実践の中心となる新しい組織を短時間で開設した。ついで,2010年度は,診療の『品質改善』のために,救急入院時から退院後の地域支援まで一貫して行う,多職種チームを核とする協働診療システム“SACHICO”を導入した。
これらの結果,病床削減による収益減を最小に抑え,2年弱で100床の病床削減(前年比約60%減)と平均在院日数の減少や救急入院率の減少を達成することができた。
しかし,組織行動学的観点から当科の取り組みを再検討すると,長期入院者の退院支援の難しさ,アウトリーチチームの一元化の頓挫,総合病院精神科での組織構造改革の困難さなどの課題が浮き彫りになった。