文化看護学会誌
Online ISSN : 2433-4308
Print ISSN : 1883-8774
4 巻, 1 号
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原著
  • 飯田 貴映子, 酒井 郁子
    2012 年 4 巻 1 号 p. 1_3-1_12
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者長期ケア施設の外国人看護職・介護職の就労実態調査から,今後看護・介護力の多様化が進むであろう高齢者ケアにおいてケア提供者が文化的適応を推進するための課題を明らかにすることを目的とした。関東地方の計1,830の介護保険施設の看護・介護管理者宛に自作の無記名による質問紙調査を行い,老人保健施設166,老人福祉施設170,療養型病床47の計383施設から有効回答を得た(有効回答率21.0%)。調査内容は施設種別,施設主体,外国人職員雇用経験の有無,雇用した職種,雇用者の国籍,来日の経緯,雇用期間,雇用理由,雇用前の準備,雇用当初の問題・困難,雇用中の問題・困難,雇用することでもたらされた良い点,回答者の基本属性であった。
     108施設(27.4%)が外国人職員の雇用経験があり,雇用した職種は,ヘルパー85名(35.0%),無資格介護職75名(30.9%),介護福祉士18名(7.4%),看護助手42名(17.3%),EPA(Economic Partnership Agreement: 経済連携協定)による介護福祉士候補生15名(6.2%),准看護師3名(1.2%),看護師1名(0.7%),であり,国籍はフィリピン,中国,韓国,ブラジル,インドネシア,べトナム,ペルーであった。
     外国人職員雇用の理由として人材不足,看護介護の経験や資格を有していたこと,日本語能力,国籍ではなく能力や人柄により採用,等挙げられた。雇用時や雇用中に起きた困難や問題は,日本語能力の不足や文化や習慣の違い,職員間や利用者との人間関係等に起きていた。一方,外国人の雇用により,仕事への姿勢や態度の日本人職員への波及,教育する側の学びの機会,異文化を知る機会,などの良い影響ももたらしていた。また,雇用経験のある施設はない施設と比較すると,雇用予定があると答えた割合が有意に高かった(カイ2乗検定,p<0.01)。
     今後も職員や利用者の多様化の進展が見込まれる高齢者長期ケア施設において,異なる文化的背景や生活習慣を持つ人々が互いの違いを認識し理解するためにも,文化的感受性や文化的コンピテンスを醸成することが重要であり,ガイドラインの作成と活用やプログラムの開発,受け入れ経験の共有などの必要性が示唆された。

  • ― 組織文化からの一考察 ―
    眞嶋 朋子, 楠 潤子, 渡邉 美和, 岡本 明美, 増島 麻里子, 長坂 育代, 山下 亮子, 佐藤 まゆみ, 正木 治恵, 浅野 美知恵 ...
    2012 年 4 巻 1 号 p. 1_13-1_25
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,専門看護師(以下CNS)が,組織において期待される役割を遂行するための看護管理者からの支援を明らかにし,CNSが看護管理者との連携を十分に行い,効果的な役割を遂行するための方法を組織文化の観点から検討することである。
     対象は看護系大学院を修了後5年以内で,医療機関または介護施設において看護を実践している「がん看護」,「急性・重症患者看護」,「老人看護」領域のCNS,およびCNSを雇用している医療施設に勤務し,CNSの直属の上司となる看護管理者で,データは面接調査法により収集し,質的帰納的分析を行った。
     その結果,対象者は,CNS8名,看護管理者8名で全て女性であった。分析の結果,CNSが認識した看護管理者からの支援は<CNSの思いを考慮に入れて関わる>,<役割を組織に浸透させるためにCNSが自信を持てるよう後押しする>等の6つに分類され、看護管理者の結果は,<CNSとしての能力を高めるために相談・助言を行う>,<組織のニーズとCNS役割がつながるように定期的に情報交換する>,等の6つに分類された。
     以上の結果から,看護管理者は,CNSに対し新しい職場環境適応のための支援を行っていることが明らかとなった。また看護管理者が組織全体をアセスメントし,組織の質を上げるためにCNSを意図的に活用していることも示された。経済的支援では,CNS活動を支える将来に向けた取り組みを示し,社会全体への働きかけの重要性が示唆された。CNSが効果的に看護管理者とコミュニケーションを通じた関係を構築するためには,組織文化の側面のアセスメントとコミュニケーション技法の習得が重要と考える。

  • 酒井 郁子, 胡 秀英
    2012 年 4 巻 1 号 p. 1_26-1_37
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,四川大地震1年後におけるヘルスケア専門職へのグループインタビューにより,災害後リハビリテーション(以下リハ)および看護における課題を明らかにし,災害後リハに携わる看護職に必要な学習内容と方法を検討することである。最終的に災害リハに携わる看護師への教育プログラムの開発に資するために,四川大地震の1年後に,被災患者のリハに携わったヘルスケア専門職へのグループインタビューを実施し,その内容を質的に分析した。結果,ヘルスケア専門職は被災患者の特徴を<合併症が多く回復に時間がかかり家族のサポートが少ない><精神的問題の解決にリハの効果が大きい><都市部と農村部のリハニーズの差が大きい><精神的問題が大きい>と認識していた。またリハ提供上の困難として<もともとリハ資源が不足しており,災害によりさらに悪化している><被災により現場のヘルスケア専門職の負担が増大している><リハの知識と技術の不足を自覚することによる無力感がある>が挙げられた。リハ提供上の課題として<被災患者のリハニーズの変化への対応><被災地のリハ拠点の開設><リハシステムの構築までの期間のサービス提供に必要な実践的研修の実施><患者と家族への教育機会の提供><リハを含む包括的な医療体制の構築><系統的なリハの知識技術を学ぶ機会の確保>が認識されていた。看護の課題として<患者教育の重要性の認識><リハ看護師のコミュニケーション能力の向上><生活機能の再獲得のための看護技術の習得>,<リハ看護の専門性の確立><リハ看護技術の標準化><精神的援助を提供しようとする際の文化的障壁への対処>が認識されていた。以上の結果から,災害リハの課題と災害リハに携わる看護職の学習内容および方法に示唆が得られた。

その他(資料)
  • ― 千葉県社会保健婦養成所卒業生の履歴から ―
    川上 裕子
    2012 年 4 巻 1 号 p. 1_38-1_46
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     千葉県を対象として,保健衛生対策が国策として推進され,農山漁村民の救済対策として国民健康保険制度が開始された時期に,国民健康保険組合の中で活動する保健婦の養成が始められた要因とその実態について検討した。
     千葉県社会保健婦養成所は,その卒業生が出身地域に貢献することを企図して設立されたため,出身村からの推薦による出願,修学に関する県の費用負担,給費等が存在した。社会事業費に占める予算割合の大きさからは,潤沢な経費,出身村に配置するための県から村への費用補助が確認できた。
     社会保健婦の活動は,住民の生活に深く関与し,それゆえ地域の文化や生活様式に根づいた支援が必要とされるものである。千葉県における社会保健婦養成の取り組みは,直接的には地域での医師や産婆の不在という物理的要因によるところが大きかったにせよ,結果的には地域社会での人材発掘,養成,活用といった点を実現したことで,地域の実情と住民の求めに応じた活動の展開を可能にするモデルとして位置づけることができるのではないかと考えられる。

特別寄稿
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