本研究は,高齢者長期ケア施設の外国人看護職・介護職の就労実態調査から,今後看護・介護力の多様化が進むであろう高齢者ケアにおいてケア提供者が文化的適応を推進するための課題を明らかにすることを目的とした。関東地方の計1,830の介護保険施設の看護・介護管理者宛に自作の無記名による質問紙調査を行い,老人保健施設166,老人福祉施設170,療養型病床47の計383施設から有効回答を得た(有効回答率21.0%)。調査内容は施設種別,施設主体,外国人職員雇用経験の有無,雇用した職種,雇用者の国籍,来日の経緯,雇用期間,雇用理由,雇用前の準備,雇用当初の問題・困難,雇用中の問題・困難,雇用することでもたらされた良い点,回答者の基本属性であった。
108施設(27.4%)が外国人職員の雇用経験があり,雇用した職種は,ヘルパー85名(35.0%),無資格介護職75名(30.9%),介護福祉士18名(7.4%),看護助手42名(17.3%),EPA(Economic Partnership Agreement: 経済連携協定)による介護福祉士候補生15名(6.2%),准看護師3名(1.2%),看護師1名(0.7%),であり,国籍はフィリピン,中国,韓国,ブラジル,インドネシア,べトナム,ペルーであった。
外国人職員雇用の理由として人材不足,看護介護の経験や資格を有していたこと,日本語能力,国籍ではなく能力や人柄により採用,等挙げられた。雇用時や雇用中に起きた困難や問題は,日本語能力の不足や文化や習慣の違い,職員間や利用者との人間関係等に起きていた。一方,外国人の雇用により,仕事への姿勢や態度の日本人職員への波及,教育する側の学びの機会,異文化を知る機会,などの良い影響ももたらしていた。また,雇用経験のある施設はない施設と比較すると,雇用予定があると答えた割合が有意に高かった(カイ2乗検定,p<0.01)。
今後も職員や利用者の多様化の進展が見込まれる高齢者長期ケア施設において,異なる文化的背景や生活習慣を持つ人々が互いの違いを認識し理解するためにも,文化的感受性や文化的コンピテンスを醸成することが重要であり,ガイドラインの作成と活用やプログラムの開発,受け入れ経験の共有などの必要性が示唆された。
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