放送研究と調査
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アーカイブ番組を大学教育にいかす【第5回】教科書にない「日本」に出会った
番組eテキスト・北米4大学での実験授業
七沢 潔原 由美子
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2018 年 68 巻 7 号 p. 42-70

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抄録

2017年、NHK放送文化研究所は北米の4つの大学でNHKのアーカイブ番組を使った実験授業を行った。対象はアメリカのプリンストン大学、ハーバード大学、ダートマス大学、カナダのトロント大学の学生136名。「東京大空襲」「満州国」「アメリカの日系人部隊」など戦争に関係した番組や、「サラリーマンのランチタイム」や「東京多国籍街の八百屋」など日本の現在の生活や風俗を伝える番組、「サイボーグ型ロボット開発者」の人間ドキュメントなどが、学生と教員にだけ限定的にネット配信され、学生たちはそれを事前に視聴して授業に臨み、教員のリードで活発な議論が行われた。その結果、少なくとも3つの目的でNHKの番組がアメリカの大学でテキストとして待望されていることがわかった。 1)日本について学ぶことに役立つ 2)日本語学習に役立つ 3)世界共通の社会問題の理解に役立つ 当初日本を研究する知日派の大学教員の授業に役立てば、との観点で始めた実験授業だが、2)、3)のようなより幅の広いニーズの存在に気づかされ、NHK番組の国際発信を活性化する端緒となる可能性も見えた。実験授業の概容を、視察結果を中心に学生のアンケート調査結果を交えて報告し、番組の教育用配信の事業化の現在と未来についても考える。

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© 2018 NHK放送文化研究所
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