放送研究と調査
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NHK文研フォーラム2022 シンポジウム 東京パラリンピック:放送とそのレガシー
渡辺 誓司山田 潔中村 美子河村 誠
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2022 年 72 巻 8 号 p. 92-107

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抄録

NHK放送文化研究所の「文研フォーラム2022」では、2021年夏の東京パラリンピック大会の放送とそのレガシーについて考えるシンポジウムを開催した(2022年3月3日、オンラインで実施)。パネリストに、NHK2020東京オリンピック・パラリンピック実施本部の樋口昌之副本部長と株式会社WOWOWの太田慎也チーフプロデューサー、NHKの中継番組にもゲストとして出演した作家の岸田奈美氏を迎え、東京パラリンピックの放送の取り組みの報告や、文研の世論調査などの結果を交えて議論を行った。また、NHKが障害者を対象に募集したリポーターとして放送に出演した後藤佑季氏に事前にインタビューを行い、障害のある当事者として放送に携わった経験について語った発言が議論を深めた。 樋口副本部長からは、NHKの競技放送を中心に、「スポーツとしての魅力を伝える」ことを大方針とし、リポーターをはじめ出演者に障害のある人を起用した取り組みなどについて、太田氏からは、IPC(国際パラリンピック委員会)との共同プロジェクトで2016年から放送を続けているパラアスリートのドキュメンタリー・シリーズ『WHO I AM』の紹介を通じて、「社会における障害の打破」という番組のねらいや、同番組から始まった多面的な発信が報告された。岸田氏は、出演者、視聴者として、そして障害のある家族と暮らす立場から、東京パラリンピックの放送に対する受け止めや、パラリンピアンがスポーツという手段を通じて幸せに近づこうとする姿に素直に感動したことなどを率直に語った。東京パラリンピックの放送のレガシーとして、後藤氏がインタビューで語った、番組制作チームとのコミュニケーションの積み重ねから得た変化の事例から、障害のある人と「協働する」ことを提示した。そして、今回の放送を出発点とし、放送を通じて共生社会の実現に向けた取り組みを継続することの重要性が指摘された。

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